プロジェクトシュタイン秘密基地に通じるメインゲートを前にLalaのか細い声が響いた。いつもの力強さの面影もなく、散々に痛めつけられボロ雑巾のように横たわるLalaの肢体の前にはゲートを守る基地の守備隊長ダイヤモンドバックが勝ち誇るように立ちはだかっていた。
そして肩で小さく息をして辛うじて起き上がろうとしたLalaの下腹部に、止めとばかりにダイヤモンドバックの強烈なボディーブローが放たれると、激痛で顔を歪めその華奢な体躯をくの字に折ったスーパーヒーローは、そのまま気を失って力なく崩れ落ちたのだった。
さて、ここで話は数時間前に遡る。
ヴァイパーの放射線ミサイルの発射を寸� �のところで食い止めたLalaは、戻るなりグレッグ博士に強い調子で訴えていた。
『これじゃあイタチごっこじゃない。こうなったら直接奴らのアジトに乗り込んで、ブランク博士を捕まえてやるわ!』
『確かにティモシー・ブランク博士の研究を食い止めなければならない。だが、奴らに警戒され、博士に脱出の機会を与えずに君がプロジェクト・シュタインに潜入するのは不可能だ。』
そういっていきり立つLalaを博士は制止した。
確かに博士の研究室へとつながっているであろう基地のメインゲートは常時固く閉ざされ、しかも守備隊長ダイヤモンドバック(Diamondback)以下最精鋭部隊で守られていた。
よしんば彼らを倒しゲートにたどり着いたとしても、ヴァイパーのアジトのゲートはパスコードを内蔵した特� �な鍵でしか開けられない構造になっており、プライマスの必死の努力にもかかわらず、今だ鍵のありかの目処さえたっていないのだ。
『そんな!じゃあ、このまま奴らが好き勝手をするのを指をくわえて見てろっていうの!?絶対嫌よ、そんなの!』
語気荒くいきり立つ彼女に、ややあって、何事か考えていた博士が口を開いた。
『実は私に考えがある。君は基地の南部の尾根へ行き、わざとヴァイパーに捕まるんだ。』
『ええっ!わざと捕まるって、ちょっとどういうことよ、それ?』
『いったん君は捕らえられ、そして実験の被験者としてプロジェクト・シュタイン内部へと連行される。そこで君は監禁室を抜けだし、ブランクを見つけるんだ。恐らく奴自身がグロンドのDNA血清の図面を持っているはず� ��からな。』
女性kirliaを進化させる方法
グレッグの突拍子もない案に驚きを隠せないLalaだったが、よくよく考えてみると勝算がないわけではないことに気がついた。
まず第一にわざと戦闘に破れたLalaをヴァイパーがその場で始末する可能性は低い。なぜなら、プロジェクト・シュタインを初めとするスーパーソルジャー計画はヴァイパーの世界征服の基幹作戦であり、Lalaのようなスーパーヒーローは彼らにとって絶好の実験材料に違いないからだ。
第二に幸か不幸かLalaは人並みはずれて体が頑丈なだけが取り柄のヒーローで、こうしたミッションにはうってつけだというのもある。
そして第三に彼女は学生時代演劇部に所属しており、演技力には多少の自信が有ったのだ。
『まったく、それにしてもあいつらレディをなんだと思ってるのかしら。 今度あったら絶対ギッタンギッタンにしてやるんだから!』
まもなく運び込まれた基地の奥深くで、気絶というか、その演技から目を覚ましたLalaが憤懣やらぬ顔で言った。
『俺は怪物なんかにはなりたかねえ!(I don't want to be a monster!)』
『俺はブランク博士の実験について聞かされた!奴は狂ってるんだ!I heard about Dr.Blank's exeperiments! That guy's crazy!』
Lalaが運び込まれてきたとき、同じ牢には何人かのヒーローが捕らえられていた。
だが彼らの力ではここから脱獄することはできなかったらしい。
一方Lalaのほうといえば、幸い派手にやられたのはふりだけで、その実防御に徹していたこともあって肉体へのダメージはほとんどない。
これなら牢の鉄格子を破ることなど、彼女にとってはたやすいことだ。
『みんな、私についてきて!ここから脱出するわよ!』
Lalaがそう言うや彼女の渾身のパンチが鋼鉄製の錠前を打ち砕き、鉄格子の扉が鈍い音を立てて地面に倒れ落ちた。
『脱走者だ!早く奴らを捕まえるんだ!(There's the escapeee! Put 'em down, quick!)』
Lalaがその馬鹿力で牢をぶち破るや、基地内には忽ち警報が鳴り響き警備兵達が押し寄せてきた。
だが、牢につながれていたもの達も一応ヒーローの端くれ、ましてやほとんど無傷のLalaとともに戦っているのだから並の警備兵ぐらいではとうてい押しとどめられるものではない。
やがてヒーロー達が出口への通路を確保したのを確認した彼女は、今度は基地内の混乱に紛れてブランク博士の研究室へと向かった。
博士が脱出する前にその身柄を確保しなければ元の木阿弥だ。
"晴れた喜び"は "あなた"はそれを行うことができます
『貴様が次ぎ起きるときは、グロンドになっているだろうよ!(When you wake up, it will be as a Grond!)』
彼女が研究室に向かうのを押しとどめようと警備兵が襲いかかってきたが、案の定脱獄の混乱に要員を裂かれてか警備が薄い。
Lalaは易々とブランク博士の研究室のあるフロアへと潜入することに成功したのだった。
『ん!?何かしら、これ?』
そのとき、彼女の目にコンソールに映し出された一通の電子メールが目に入った。
どうやらヴァイパーの別のアジトからブランク博士に送られたものらしい。
"ブランク博士へ
ヴァイパーの科学シンポジウムでの、お前の見苦しくてがさつなパフォーマンスも、人間のバイオシステムにグランドのDNAを組み込むというお前の遺伝子工学の論文も、さして驚くべきものはない。
果たして、この私が恐竜のDNAをリバースエンジニアリングする前に、お 前が遙か南西砂漠の最初の研究所で完全なグロンド血清を完成させることができるだろうか?
率直にいって、君はだ、ヴァイパーとスプリーム・サーペント(the Supreme Serpent.)にとって厄介者でしかない。
科学者として、特に私のような知性の模範とも言うべきものと比較されるなら、詐欺師面ということだ。
君のグロンド血清の実験は近視眼的なもので、ひどく病的な代物だといえる。そして私は君の不可避な失敗をあざ笑うことになるだろう。
心からね。
Dr.Dデモガード(Dr.D.Demogaard)"
『なによこれ!?あきれた、奴らってお互いに訳のわからない研究をして、味方同士でののしりあってるって訳?』
どうやらヴァイパー内も一枚岩というわけではなく、組織の科学者が銘々自らの成果を誇示し、ライバルをけ落とそうとしているらしい。ということは、このアジト以外に、別のプロジェクト名がついたアジト(Nest)が存在し、また別のおぞましい生体実験を繰り返しているのかもしれない。
少なくとも、この世界のどこかでデモガード博士の恐竜再生計画が進んでいることは確実のようだ。
そうこうするうちに、Lalaの視界を上位の研究者を思わせる白衣の男が横切った。
出で立ちから判断するに、恐らく彼がブランク博士だ。
『ブランク博士!あんたの馬鹿な研究はこれでお仕舞いよ! 手荒なまねをされたくなかったら、大人しく研究資料を引き渡して投降しなさい!』
ナルトはヒナタで何エピソードが出ていない
そんなLalaの勧告に手元のマシンガンを乱射して懸命に反抗を試みるブランク博士だったが、並の人間ならともかく、彼女にとってはポップコーン程度の衝撃でしかない。
しかしLalaが博士の身柄を確保しようと近づいた瞬間、ブランク博士は突然人間のものとも思えぬ低いうなり声とともに、何かに取り付かれたように呟いたのだ。
『私のDNAを感じるぞ・・・捻れて・・・突然変異する・・・・・・そして変身するのだ!(I can feel my DNA....twisted....mutating....transforming!)』
なんということだろうか。博士の体はみるみるうちにグロンドを思わせる緑の肌と複数の腕をもつ怪物へと変化していくではないか。
『ちっ、グロンド血清とやらはもう完成してたのね。しかしまさか最初の試験に自分自身の体を使うなんて。』
コントロールしやすくするためなのか、それとも未だ未完成の部分があったのか、博士の体はグロンドほどは巨大化しなかった。だがあの化け物のDNAをひきついでいるなら、Lalaにとってやっかいな相手であることに違いはない。
『やるしかないみたいね。仕方がない。覚悟しな、化け物!』
そういうや否や、Lalaは今やグロンドと化したブランク博士に飛びかかったのだった。
そして・・・・結果的に最後までこの場に立っていられたのはヒーローのほうだった。やはりグロンド血清はまだ未完成だったのだ。
いかにグロンドのDNAといえど、本物ならともかく、劣化したコピーでは彼女の力には及ばなかったのであった。
Lalaが研究室の端末からグロンドのDNA設計図を引き出した後、その情報も含めて基地のメインフレームを破壊しようとしたとき、一通の電子メールが目についた。
それは先ほどのデモガード博士のメールに対する返信のようであった。
"グロンドの遺伝子情報を解析するにあたって、私は多くの人間を被験者として利用した。そして、彼ら自身のDNAマップに基づいた結論として、十分な「潜在的な恐竜のDNA」が「起きる」ためには人間の遺伝子情報は使用し得ないと� ��信をもって言うことができる。
要するに貴様の無駄な理論は、ヴァイパーには何の価値もなく、より価値のあるプロジェクト(すなわち、ヴァイパーによって制御されたグロンドどもの軍をつくるという私自身のプロジェクト・シュタインのことだ)から貴重な資金と資源を略奪するだけのものなのだ。
さらに、ドライシャ(Draysha)との共同研究による私の実験は、明らかなに両者が混じり合った結果となった。
私は貴様が多少なりとも異なった結果を成し遂げるとは想像もつかない。
そして、もう一度、私は貴様が誤って導かれたこの研究を放棄するよう勧告する。
もし貴様が、理性を取り戻すのならば、私は貴様の乏しい才能にふさわしい、地位を与え、快く私の研究所に迎入れるあろう・・・そう、たとえば下級研究アシスタントとか部屋の管理人とかでな。
ティモシー・ブランク博士(Dr.Timothy Blank)"
『全く・・・ホントあきれた連中だわ。』
メールを一瞥したLalaが言った。
だがメールが示唆するところをみればプロジェクト・シュタインの壊滅はLalaとヴァイパーとの戦いの終わりではなく、むしろ始まりを意味することは明らかだった。
そしてもう一つ、Lalaには気にかかることがあった。
それは彼女が基地に潜入する際、メインゲートの脇で見つけたある機密書類のことだった。
カナディアン・プレコッグス(Canadian Pre-cogs)からサーペント・ジェネラル(Serpent General)へと宛てられた(恐らくカナダの別のアジトと基地の司令官の暗号名であろう)この書類には、カナダでプロジェクト・アウェイキング("Project Awakening"目覚め計画)と呼ばれる別の計画が進んでいること、そしてその展開のために更なる資金が必要で、それがドクターデストロイヤーの復活と関連していることが記されていたのだ。
そしてその機密書類の結びにはこう記されていた。
"
本書の主題でも"Cutie Lalaと呼ばれているスーパーヒーローについて、幾つかの言及をしている。彼女は潜在的に我々の世界征服活動に大きな脅威をもたらすことだろう。(Subject also makes multiple references to a superhero called "Cutie Lala", who poses, potentially, a great threat to our worldwide operations.)"
(Mission Arc Complete!)
続きを読む
0 件のコメント:
コメントを投稿